当社の生物医学エンジニアであり神経インターフェースの専門家であるシュリヤ スリニヴァサンと、投資ポートフォリオ・ストラテジストのレイチェル ラクヴィカは先日、北米ニューロモデュレーション学会(NANS)の第26回年次総会に出席しました。
シュリヤの意見
ケンブリッジコンサルタンツの神経インターフェースを専門とする主任エンジニアとして、ラスベガスで行われる今年のNANS(北米ニューロモデュレーション学会)に参加することを楽しみにしていました。ニューラルインターフェースの分野にのめりこんでいる私にとって、この分野の有識者たちが集まり、何が起こっているかを知ることはこの上ない喜びです。今年のNANSで私が注目した重要なポイントは次の通りです。
1 データは新しい石油のような価値があるが、有効な活用が求められる。
まず、今年のNANSではビッグデータというアイデアが話題になりました。現在、患者から非常に多くの情報を収集し、それを臨床医や機器メーカー、患者利益団体と共有することができます。ケンブリッジコンサルタンツ社は、Bluetooth技術をインプラントの形で体内に導入することに世界で初めて成功しました。この技術により、より高い時間分解能で、より多くのデータを体内から得ることができます。しかし、データだけでは不十分であり、機器メーカーは大量の収集データをどのように扱うかを慎重に検討する必要があります。この点で、AIや機械学習といった手段は有用である可能性があります。
2 個別化は次世代インプラントの鍵である
治療の個別化は今日の医療における究極の目標です。NANSでは数多くの研究発表で、ユーザーエクスペリエンスのいくつかの側面が依然として定量化困難であることが示されていました。個々の患者が痛みをどのように認識するかという非常に厄介な問題があります。例えば、痛みを正確に理解するためには、客観的に、様々なパラメータを用いて、タイムリーな測定基準が必要です。この3つの観点を活用することで、痛みの管理は個別化され、より効果的なものにできる可能性があります。産業化への道のりはまだ長いですが、実現が期待されています。ケンブリッジコンサルタンツ社では、センサーとプラットフォームの開発を行っています。これにより、バイオマーカーを捉えることで、コネクテッドヘルスの実現への大きな一歩に貢献しています。私の同僚のジョー・コリガンはNANSでイノベーションについての基調講演を行い、慢性疼痛に対する洞察主導型ケアの未来についてビジョンを示しました
3 リアルワールドデータが患者への影響を可能にする
私たちは、Intersystems社、Rune Labs社、武田薬品工業株式会社、米退役軍人保健局をパネリストに含む「リアルワールドデータとリアルワールドエビデンス」というセッションを開催しました。このセッションでは、センサーや患者の入力から得られる幅広いデータを統合して理解するにはより良いシステムが必要である、ということが繰り返し強調されました。傾向とパターンを特定するアルゴリズムは、医薬品の新たな適応を可能にし、デバイスのアプリケーションが拡大します。ケンブリッジコンサルタンツ社で10年間にわたり開発を行ってきたAIとディープラーニングの能力により、リアルワールドエビデンスを活用して、集団ベースのアプローチに基づく治療法の発見や、治療を個別化することができるでしょう。このことは臨床医の経験値や、患者ケア、規制の枠組みを根本から変えるでしょう。
レイチェルの意見
4 データ収集戦略を定義し、現在だけでなく将来起こりうる質問に答える
NANSに参加し、私はデータ収集の方法に関して、5年先、10年先まで十分に予測をする必要があるという確信を得ました。メーカーは今日、直面している問題だけでなく、将来、スマートインプラントや収集データが持ちうる潜在的な問題を考慮して、データ収集の方法を明確にしなければなりません。
脳とコンピューターのインターフェースは、ますます注目を集めている最先端の分野です。私は麻痺した患者が容易にテキストメッセージを送信でき、「脳の健康状態」を監視できるような脳インプラントや、患者によっては様々なニューロモデュレーションインプラントが使用されると予測します。例えば、パーキンソン病を治療するために迷走神経に1つのインプラントを必要とし、慢性疼痛を治療するために脊髄に別のインプラントとする場合があります。このようなデバイスが長寿命であるためには、患者が複数のデバイスを移植し、使用しする将来を先取りして検討する必要があります。
5 消費者の選択がますます重要になる
Fitbitで運動の記録をチェックし、Apple watchで健康データが記録できるようになれば、スマートインプラントに対しても同様の機能を期待する人もいるはずです。スマートインプラントと繋がる患者の体験が技術の確立にとってますます重要になる、ということをNANSで確信しました。Fitbitのように素晴らしく、使いやすい体験が模索されています。ケンブリッジコンサルタンツ社には非常に強力なユーザーエクスペリエンス(UX)およびヒューマンファクターの部門があります。ここでは、デバイスを用いて患者の体験に着目することがいかに重要であるかを設計段階の始めから理解してきました。例えば、パーキンソン病患者のニーズに焦点を当てたスマートインプラントのコンセプトを公開しています。
6 ビジネスモデルを念頭に置く
医療インプラントの分野は劇的な発展の可能性があるため、製品開発のビジネスケースを頭に入れておくべきです。今まで以上に個々の患者に合うインプラントが時代の流行となりつつあります。単に「汎用性」があるだけでは十分でなく、患者を喜ばせることが求められます。最近の研究では、あるインプラントにおいて患者の不満は、充電を行う頻度に大きく依存することが分かりました。これは開発者にとっては些細な問題に思えますが、患者にとっては重要な問題です。月に10~12回の充電が必要な場合、インプラントの満足度(さらにはコンプライアンスさえも)は大きく低下します。充電頻度を月に4~5回に減らすことで満足度の改善に繋がりました。
特に将来的にバリューベースモデルが導入されて、例えばメーカーがアウトカムやデバイスが機能するかどうかの観点に基づいて償還を受ける場合、報酬の問題はより注目されるでしょう。患者がもしデバイスを気に入らなければ、それらを容認する可能性は低くなるでしょう。患者が購入する力を持つようになりコミュニティフォーラムで意見を述べることでデバイスメーカーに圧力をかけるようになるでしょう。私はこのことこそが今後の医療分野の成功の鍵であるという確信を持っています。これを達成するためのクライアントとの協働を心待ちにしています。
今年のNANSはインスピレーションや成長の機会という点で、非常に考えさせられるものでした。ケンブリッジコンサルタンツ社は、この分野にとても精通しているため、近い将来の心躍るようなプロジェクトを楽しみにしています。スマートインプラントの未来を切り開くことに関心がありましたら、ぜひご連絡ください。