量子技術は転換点に差し掛かっており、まもなく商業用途に使用できる量子コンピュータが登場するでしょう。筆者は以前、この先の驚異的な事業優位性を手に入れたいのなら、言い逃れをしてはならないと述べましたが、今回はさらに具体的に説明します。 量子技術が他の技術とどのように異なるのか、何が得意なのか、既存のシステム内のどこに適用できるのかを理解するための実践的な第一歩を踏み出すときが来ました。
これらの一見手強そうな課題に対する参考情報が必要であれば、キャップジェミニの最新レポート「 ‘Seizing the commercial value of quantum technology’(量子技術の商業的価値を掴むには)』をお勧めします。 Capgemini Quantum Labの一員として、筆者はアルゴリズム開発の非常に現実的かつ実用的な視点を提供し、レポートに大きく貢献できたことをとても嬉しく思います。
先ほどの「現実的かつ実用的」とは何を意味するのでしょうか。急成長する量子産業やビジネスコミュニティ全体が量子コンピューティングの一般論について盛んに議論している中、筆者やケンブリッジコンサルタンツおよび Capgemini Quantum Labの同僚は、量子イノベーションを最適化するための具体的かつ実用的な方法、そしてそこから得られる価値に議論を移したいと考えています。;;
ここで説明するのは、レポートで「アプリケーション認識アルゴリズム」(略してトリプルA)と呼ばれているものです。これは量子ハードウェアへの投資リターンを最大化するもので、Quantum Labの価値実現に向けた三次元アプローチにおいて、他の二つの中核的な能力と並び重要です。一つ目は「量子アドバイザリー」で、これは顧客がビジネスケース開発と導入戦略を定義するためのサポートをします。二つ目は少し長い名前で、「量子中心データ主導型R&D」と呼ばれています。やや複雑に聞こえるかもしれませんが、単に戦略的なユースケースを特定し実行することです。
量子アルゴリズムの数学
量子アルゴリズムの話となると、筆者は線形代数、漸近解析、統計的推論やその他たくさんの実際に使われている数学的要素に関して、この場で長々と語ることはできますが、詳細に知りたい方には個別でお話ししますので、ぜひご連絡ください。ここでは一般のビジネス読者向けに、より広い応用の文脈を理解することで量子アルゴリズムを最適化するという、メッセージの核心にとどめておきます。
開発者たちは現在、完璧な量子ハードウェアは現在存在せず今後も決して存在しえないだろうという、ある種のジレンマに直面しています。しかし、この問題は以下の2つの指針に従った新しいアルゴリズム設計アプローチによって軽減できます:
- アルゴリズムは、ハードウェアの特性に合わせて最適化するために、ハードウェアと共にエラー修正の責任を分担するべきである。
- アルゴリズムは、エラーに対する耐性を向上させ、またハードウェアのパフォーマンスを最大化するため、アプリケーション固有の情報を組み込むべきである。
私たちは、技術が成熟するにつれて、このアプローチにより挑戦的なアーリーアダプターが量子技術への投資から価値を得ることができ、したがって時間とともに最大の商業的可能性が実現されると信じています。Quantum LabのトリプルAアルゴリズムはこのプロセスに従い、「価値創造のために目的に応じて構築」されています。つまり、顧客と協力してアルゴリズムを開発・調整し、限られた量子リソースを最適化することで、より早く価値を引き出すことができます。
キャップジェミニのレポートは、ビジネスユースケースは専門家であるパートナーのサポートと指導を受けながら、十分な情報に基づいて検討することによって初めて明らかになる、というもう一つの重要なテーマについて説明しています。これらのユースケースから価値を引き出すためには、量子アルゴリズムが古典的アプローチを上回ることができる明確かつ具体的な領域を特定することが核となります。また、これは従来通りのプロセスでは不可能な活動に関しても同様です。
レポートでは、量子技術が実用的な価値を提供する可能性がある3つの化学関連ユースケース(創薬、炭素回収、電池技術)について探求されています。より具体的には、エアバス社との協力により、量子コンピューティングアプリケーションが複雑な航空宇宙の課題を解決する可能性について探っています。
エアバス社の量子技術のCentral Coordinatorであるジャスパー・クラウザーは次のように述べています。「ユースケースの範囲は広範で、化学分野における課題が含まれています。例えば、燃料電池内の反応をモデル化することで、航空業界の脱炭素化に向けた重要な要素である、水素駆動型航空機に向けた課題の解決を加速させる可能性があります。』
Capgemini Quantum Labのイニシアチブにおける筆者の役割は非常に刺激的であり、すべての関係者にとって価値があることは、おそらく言うまでもありません。ケンブリッジコンサツタンツの同僚と共に、非常に専門的なディープテックの知識を広範なキャップジェミニのサービスに提供できることを大変嬉しく思っています。
最先端量子コンピューティングの専門知識
古いことわざにあるように、全体は部分の総和に勝ります。そしてこの文脈においては、「全体」は異なる分野や最先端の応用研究活動に豊富な経験を持つ量子専門家が寄り集まることを指します。現実的な懸念は、可能性を追求する欲求と、現状可能な技術レベルから価値創造を優先することとのバランスを取ることです。
当社の役割は、企業による明確な成果につながるユースケースの開発を支援することです。これは実社会での応用と真の競争優位性に関するものです。結論として、当社は、今すぐ行動を起こし、量子ワークフローを既存のビジネスプロセスに統合することから始めることをお勧めします。これには、近々開発されるハードウェアの可能性を最大限に引き出すために、量子アルゴリズムの機能を応用先に活用することも含まれます。これにより変革的なビジネス価値が創出されるでしょう。より詳細なディスカッションが必要な場合は、お気軽にご連絡ください。ご相談をお待ちしております。
専門家
ジェームズは、将来の顧客ニーズに対応するため、量子コンピューティング技術開発チームをけん引。量子コンピューティングの将来性と、その実現に向けた課題を明示するデモンストレーターの製作にも取り組む。